
今日の御題は1965~66年にかけて放映されたアニメ『スーパージェッター』です。 この作品は一千年の未来から時を超えてやってきた青年と流星号が繰り広げる冒険アクションで、 久松文雄が原作者ということになっていますが、彼はあくまでも漫画執筆担当者で、 実際は筒井康隆、眉村卓、半村良、豊田有恒等の、日本SF界の蒼々たる面々が 基本設定だけでなくシナリオも執筆していたため、明るい未来像を描こうとする 当時のSFの息吹があちこちに感じられます。
タイムパトロールという概念もこの頃の倫理的なSF観ならではの設定で、 もし実際にタイムマシンが可能になったとしたら、それこそ逃げ場はいくらでも出てくる訳だから、 とてもそういう警察機構なんか機能しないでしょうね。ジェッターの持つタイムストッパーも 「30秒だけ時間を止められる」という便利な機械ではあるんですが、 それ自体が時の正常な運行を妨げるものであり、タイムパトロールがそんなものを 所持していいのかという疑問も残ります…。
ともあれ、久松文雄の描くバタ臭さと日本的センスが両立したルックスを持ち、 いかにも美形声の市川治の声でしゃべる未来から来たカッコイイ青年が、 スマートなコスチュームをまとい、サイコーのマシンを運転し、カワイイ女のコと共に 数々の冒険を繰り広げる訳だから人気が出ないはずがありません。 アニメを見ていた人なら、あのワクワクする主題歌とその冒頭のジェッターが流星号を呼ぶセリフを きっと憶えているんじゃないでしょうか?
その人気がいかに高かったかは、当時、契約時の交渉により漫画担当の久松だけじゃなく、 シナリオ担当の面々にもちゃんと版権料の配分はあったそうで、 筒井康隆の場合は、そのおかげで作家として一本立ちできるほどの収入があったそうだし、 豊田有恒の場合は、当時の大卒の平均初任給の100ヶ月分にあたる約200万円を得たという 逸話からも伺い知れます…。
流星号は、タイムパトロール隊員であるジェッターに配備されたタイムマシン兼万能移動機です。 空を飛び、水に潜り、陸上の走行も可能という、その機能だけでもすばらしいマシンですが、 人工頭脳を備えちゃんとジェッターの命令に従うところも当時の男の子たちの心をつかみました。 ジェッターの命令に従うために身をよじりながら懸命に頑張るその姿は、 後のハービーやバトルホッパーやナイト2000のように、機械というより友達だったんですよね…。

その人気の高い流星号だけに本放送当時から商品化はけっこうあって、 有名どころではこのイマイのプラモデルがありました。 おおよそ1/24スケール見当の大きさで、この写真は後の再販箱だと思いますが、 このコテコテの油絵風の箱絵はマッハ号のそれと共に御記憶の方も多いんじゃないでしょうか? イマイからは、エーダイのグリップキャラターのパッケージの影響を受けたと思われる トミカサイズのグッドモデルでも流星号は出ていましたが、それは放送終了後かなり経った、 たぶん70年代終盤~80年代初頭のことだったと思います…。

流星号の合金といえば長いことそれだけでしたが、近年キャラウィールからも出たので、 イマイのを買いそびれていた人もやっと手にすることができようになりましたよね。 それから、ほぼ同じ時期にパイロットエースからもチャンピオン合金という名称で 1/36相当の商品が出ていました(これはパイロットエースのサイトで画像が見れます)。

今回お見せしているこのミニカーは、レジンキャスト製のガレージキットで、1980年代終わり頃に ワンフェスで購入したモノです。全長12.6cmなんでおおよそ1/43スケール見当でしょう。 ちゃんと版権も取った正規品で、当時はイマイのプラモかグッドモデルしか無い頃だったので、 もう大喜びで購入しました。とある別の模型とセットだったんですが、そちらも欲しかったので、 まさに一石二鳥でしたね!(笑)

色は自分で塗りましたが、当時の流星号のカラー素材といえば、1980年頃に出た サン出版のコミックスの表紙のイメージが強かったのでそれに合わせてボディは白にしてます。 今はもっと黄色く塗られることも多い流星号ですが、モノクロアニメでもそうだったし、 やはり白いイメージが強いですね…。細部はこの表紙絵とは違いますが、 まぁその辺はいろいろなイメージの集大成というところでしょうか?(笑)
科学万能の時代は公害の出現により終わりを告げ、今ではむしろ過度の科学の発達は 暗いものとして描かれることが多くなっていますが、『スーパージェッター』は最早 時代遅れの作品となってしまったのでしょうか?
いいえそんなことはありません。ジェッターが「科学の子」ではなく、 「知恵と力と勇気の子」である意味をもう一度考え直してみれば、 作品の根底に流れているのは単なる科学万能主義ではなく、 「科学により人間の知恵と力と勇気がより一層鍛えられて優れたものになっていく」、 という極めて健全で前向きな考え方であることが解ってきます。 科学に制限を設けることが不可欠になっている21世紀初頭の今こそ、 この『スーパージェッター』を見直すべきなのかも知れませんね…。
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