
あの何かと物議を醸している新オーナーからは「作品を作るたびに赤字になってしまう」と バッサリと言い切られてしまった過去の円谷プロの作品群。 確かにその通りなんですが、実際の制作現場に落ちてくる予算の少なさはCMの比じゃないので、 その事実を知った上での発言なのかどうか、以降、お手並み拝見と行きましょう(苦笑)。
さて、「借金とヒーロー」ということで思い出すのがこの作品です。 ということで、今夜の御題は、『ジャンボーグA』からジャンカーZです。
『ジャンボーグA』とは1973年に円谷プロダクションによって制作された特撮ヒーロー番組で、 『ファイヤーマン』『ウルトラマンタロウ』と共に、円谷プロ創立10周年記念番組でした。 特殊な経由を持つ作品で、マンガが先行したんですが、1970年に小学館の学習雑誌に 「ジャンボーX」と「ジャンボーグエース」という二つの作品が相次いで掲載されています。

「ジャンボーX」の方は「まもる少年が変身するウルトラセブンの弟」という設定で、 マンガを描いていたのは『ウルトラQ』も手がけていた中条けんたろうでした。 「ウルトラ兄弟」から外されたウルトラの弟と言えば『ウルトラマンA』登場の 梅津ダン少年が有名ですが、マンガとは言え、それ以前にも存在した訳ですね。 このジャンボーXはブルマァクからソフビも出ており、ソフビ系のサイトでは 取り上げてある所もあるので、どうか興味のある方は検索してみて下さい。
もう一つの「ジャンボーグエース」の方は内山まもる作品で、小学2年生に掲載されました。 これは少年が巨大ロボットに搭乗して戦う設定で、デザインもほぼジャンボーグAそのままです。 私はこちらの内山版は読んでいたので、後にソフビ収集を通してジャンボーXを知った時には、 その更に前の企画かと思っていたんですが、どうも競作に近かったようですね。
たぶん、新ヒーローを創作するにあたって、これまでの円谷ヒーローの延長上がいいか、 全くの新機軸で行くのがいいのかを、子供たちの反応を見て決定しようとしたのでは ないでしょうか? 『ミラーマン』の際も、若干デザインが違う目が鏡になっている ヒーローをマンガとソフビで先行させた例があるので、その流れなんでしょう…。
この二つのマンガを経て、デザインと設定が決定したように思われる『ジャンボーグA』ですが、 なぜか企画はそこで一旦ストップし、実際にTV化されるまでには二年の月日が経っています。 この空白期間が何を意味するかですが、ひょっとしたら、ジャンボーグ企画は それほど人気が上がらず、一旦はオクラ入りになったんじゃないかと思います。 それがとある巨大ロボット作品の影響で再び注目を浴び、再起動したのではないでしょうか?
そう、あの『マジンガーZ』が1972年の10月に連載が、12月にはアニメが始まっているのです。 集英社フジテレビ、そして講談社まで相乗りしてブームを盛り上げた『マジンガーZ』なんで、 そこに乗れなかったNET(現テレビ朝日)が「何かロボット物はないか?」ということで、 すでにあった企画を元に円谷プロをつついて作らせたのでないかという気がします。 『ジャンボーグA』の放送開始が73年の1月17日という半端な時期なのも、 夏の終わり位に『マジンガーZ』のことを知ったNETが、10月の連載開始を見て驚いて、 大慌てで円谷に発注し、ようやく間に合ったのがその時期だったのではないでしょうか?

ともあれ、特撮版『ジャンボーグA』は始まり、セスナが変身するジャンボーグAの 強化策として中盤から登場したのが、このジャンカーZが変身するジャンボーグ9です。 上の写真は、挿入歌として出されたジャンボーグ9のテーマソングですが、左がAで、右が9です。
ジャンボーグは、マンガ版とは違いエメラルド星人から送られた宇宙サイボーグという設定で、 非力だけど空を飛べるAと、パワフルだけど陸戦用の9を立花ナオキが使い分けるの斬新でした。 斬新と言えば、立花ナオキはこの作品世界の防衛隊PATの隊員でなく、元隊長の弟だけども 民間人という設定もあまりないもので、そのため、彼は借金に苦労することになるのです。
そう、ジャンボーグの2台は幸運にもエメラルド星人から贈られるのですが、 それが憑依する地球のメカはセスナもクルマも、ナオキ側が保持していた物で、 セスナはナオキの勤める会社の所有物でしたが、資金繰りに困って売り飛ばされる エピソードがあるし、ジャンカーZに至っては一応はナオキの物なんですが、 それを買うお金を姉に借り倒し、姉はその資金を工面するために、 死別したナオキの兄である夫から贈られた指輪を処分しているのです…。
主人公がセスナパイロットというのは、『ウルトラQ』の万丈目と同じですが、 当時の超高級車スカイラインスポーツを乗り回していた彼に較べ、 軽自動車のホンダZ一台買えない立花ナオキのダメんずぶりはけっこうキテますが、 この役を演じた立花直樹は後に麻薬に手を出し、芸能界を去ったので、笑うに笑えません。

お見せしているミニカーはトミカダンディをリペイントしたモノで、実測7.8cmの標準サイズ。 ただ実車が小さいので、スケールは1/38のミニカーです。

実車はこのようにもう少し赤い部分がオレンジがかった感じにも見えるんですが、 ジャンボーグ9の色合いと違っても変だと思うので、そちらに近い色にしてあります。
借金に苦しんで、とうとう身売りしてしまった円谷プロですが、 10周年記念作品でそれを想起させる内容を作り出していたというのは何とも皮肉な話で、 やはりヒーローというのは、なるのも作るのも、かなりつらいものだった ということなんでしょうかねぇ?(笑)。
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