今夜の御題は日本のF1マシンとして、架空の存在ながらも今なお圧倒的な存在感を持つ、 『赤いペガサス』のSV-01改です。 セナやプロストがホンダのエンジンで優勝を争い、中島も正規ドライバーとして参戦し、 日本にF1ブームが訪れた1990年よりも早く、日本人は2度、F1に親しむ機会がありました、 1回目は1965年のホンダの最初の挑戦の時で、最終戦のメキシコGPでリッチー・ギンサーが 念願の初優勝を果たしますが、当時の日本ではF1というものがよく理解されていなかったため、 世間的にはあまり好評では迎えられなかったという説もあります。 しかし、車好きはこの快挙を熱狂的に歓迎しただろうし、1967年に『マッハGoGoGo』が 制作されたのは、この優勝の影響大であることは間違いないでしょう。 ちなみにこれは『マッハGoGoGo』で主人公の三船剛が2回ほど乗るフォーミュラーカーですが、 その形状やカラーリングから、ホンダの優勝車RA272の影響を受けていることは明らかです。 そして12年後、スーパーカーブーム真只中の1977年に、その頂点としてのF1の世界を描ききったのが、 この村上もとかの『赤いペガサス』です。なにせ、スーパーカーブームに火を付けた 『サーキットの狼』の中でタマに憧れの英雄的に描かれるマリオ・アンドレッティ、 ニキ・ラウダ、ロニー・ピーターソン等が主人公ケン・アカバのライバル達として登場し、 ケンと時には争い、時には協力し合う様子を、村上もとかによる緊密なペンタッチにより ぎっしりと描かれるわけですから、人気が出ないはずがありません。 (上の画像は小学館文庫版『赤いペガサス』第6巻P16~17からの引用です。表紙写真はこちら) この『赤いペガサス』は、『サーキットの狼』が池上さとしの画力がイマイチだったために、 それを補うため導入したハッタリズムの世界に、そろそろ飽き始めていた 少年たちのハートをガッチリとつかみました。 実は『サーキットの狼』も終盤はF1の世界に飛び込むのですが、あまり語られることがないのも、 間違いなくこの『赤いペガサス』の煽りを食ってのものでしょう。 日本におけるF1理解に間違いなく貢献したこの作品ですが、主人公のケンが何万人に一人しかいない ボンベイ・ブラッドという血の持ち主という設定のために、常にケガと輸血の問題がつきまといます。 このタイトルの「赤いペガサス」というのは、ケンのエンブレムのことですが、 フェラーリの跳ね馬に対抗したと同時に「血の赤」を意味しているのかも知れません。 また「赤いペガサス」のエンブレムではモービル石油のモノが有名ですが、 それとは形が違うし、関係あるかどうかは不明です。 その血液絡みの大きなエピソードとして、ブラジルでケンが大量出血した時に、 空輸されてきた輸血用のボンベイ・ブラッドを、マリオ・アンドレッティが ピーター・ハントのマクラーレンを借りて公道を全速で飛ばして運び、 途中、邪魔な大型トレーラーの上をジャンプしてまで届けようとしますが、 とうとうムリがたたりエンジントラブルでストップしたのを、 それを予測しタイレルP34で追ってきたロニー・ピーターソンがリレーして、 見事病院まで送り届けるというものがありましたが、そのヒューマニズムあふれるシーンは、 当時この作品を読んでいた多くの少年たちを感動の渦に巻き込みました。 このあたりの上手さも、後に『六三四の剣』や現在連載中の『龍』といった 人間ドラマを得意とするようになった村上もとかならではの筆の冴えでしょう。 このミニカーはポピニカの標準サイズで、大きさは約12.2cm。1978年の発売です。 当時ポピニカは『マシンハヤブサ』『アローエンブレム・グランプリの鷹』『激走ルーベンカイザー』 といったレースアニメからの商品を多く展開しており、アニメ化が成されていないこの『赤いペガサス』も その流れで発売されたものと思われます。後輪にブルバックゼンマイを装備し、 ちょっと後ろに引っ張ると猛烈ダッシュするというギミックが仕込まれましたが、 当時のブルバックゼンマイはまだ大型で、エンジンでうまくカモフラージュしてあるとはいえ、 若干、元のマシンのラインを損ねる結果になっていたことは残念ですが、 こうしてミニカーとして出してくれただけでも有り難いというものでしょう…。 このミニカーは本格的にコレクションを開始してからの30年、実物を見たことすら無かったのですが、 先日行ったあるフリーマーケットで、ジャンクの合金モノが詰まった箱の中から掘り出したモノです。 その時は上の写真のようにドロドロ・サビサビの状態で、フロントのステアリングも折れていて、 正直触るのもイヤな感じだったんですが(笑)、「見慣れないF1カーだな~」とか 思いながら裏板を確かめてみると「SVーO1KAI」の文字を発見! ひさびさに身体に電気が走る感じがしましたが、フリマにも最近は強欲な業者も混じってるから、 売り手におそるおそる「これいくら?」と聞くと、「100円でいいよ」との返事です。 天にも昇る気持ちで買ったことは言うまでもありません(笑)。 しかし、この個体、業者が100円しか付けなかっただけあって、実に状態は惨かったです。 どうも砂場かアスファルト上でさんざん走らせたようで、底板と端々がギザギザに削れていました。 バラしてみると内部にもドロや砂がこびりついています。しょうがないんで部品を全部バラバラにし、 一つ一つをブラシで洗浄しました。特徴であるブルバックゼンマイは完全固着状態だったので、 こちらもバラして砂を取り除き、オイルを差してみたところなんとか回るようにはなりましたが、 ギヤが欠けてしまっていて、ダッシュはもうできません。 幸い、フロントステアリングの折れは、接着とプラ板による一部の部品自作で何とかなりました。 裏面のエンジン部分も表面は砂で削れていましたが、幸いパーツ欠けは無かったので、 銀色塗装とツヤ再生でフィニッシュ。底板も一応黒く再塗装はしたけど、 削れてしまってるのはもう、(゚ε゚)キニシナイ!! (w 裏面の惨状に比べて、ボディ部は比較的無事で、チョロチョロあるハゲやヒケに色を足した他は、 フロントのペガサスマークは完全に失われていたので、自分で写真を元に描き、 あとはフロントのウイング等、端々が削れてしまっていたので、 原型を損なわない程度にヤスリ掛けして、形を整えました。 以上、なんとか見られる状態にするまでに、けっこう手間がかかったこのフリマ物件ですが(笑)、 何と言っても原価100円です。この出会いには感謝したって仕切れるものじゃありません。 実はこの日はもう一つ格安出物をGETしたので、しばらくフリマ通いがクセになりそうです! セナが突然に逝ってしまって以降、私自身のF1熱は急激に冷めてしまったのですが、 それでも先日のシュマッハーの引退は、あの時代の若手のホープで、後に帝王に登り詰めた彼にも とうとうその日が訪れたのかと感慨深いものがありました…。 今回のこのSV01改の入手をきっかけにして、この車と激しいバトルを闘い 私も大好きだった当時のF1カー、JPSロータスや6輪タイレル等を 何台かコレクションしてみようかと思います…。
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