 今回は映画と史実の細かい違いを拾っていきます。 映画では開始早々、大半のクルマがフェイト教授の妨害工作でクラッシュしてますが、 ここで総出場車を画面で判別できる範囲で推測してみると、1番がグレートレスリー(米)、 赤の2番がダラックJJ1907(仏)、緑の3番がスタッツ・ベアキャット1914?(米)、 黒い4番がパナール1907?(仏)、5番が教授のハンニバル8(米・自作)、 6番が赤茶色のフォードモデルR(米)、たぶん7番がマギーのスタンレー・EX・スティーマー1909(米) というメンツでしょう。外見からの判断なんで疑問は残るとはいえ、7台中5台が見事に アメリカ勢で占められているのは、この映画でのレース成立のアレンジから考えて当然で、 多少年代が合わないクルマがあるのは御愛敬(笑)。
 赤の2番であるDarracqというメーカーは今日でこそ有名ではありませんが、1896年にフランスに 設立された最古の自動車会社の一つで、フランスだけでなくドイツではオペルの元になる会社、 そしてイタリアではアルファロメオの元になる会社の設立にも貢献したメーカーでした。
 緑の3番であるスタッツは、1911年の最初のモデルからインディ500レースに出場した アメリカのスポーツカーとして有名な存在で、特に14年から発売されたこのベアキャットは、 座席とガソリンタンクおよびスペアタイヤ等の最小装備を備えただけで風防すら持たない 質実剛健で野性的なロードスターでした。ちなみにベアキャットって本来はレッサーパンダですが、 アメリカのスラングでは「闘士・豪傑」の意味になるそうで、スタッツの場合はこっちでしょうね。
 黒または濃紺の4番であるパナールは1890年にフランスで初めてガソリン自動車を開発した、 世界最古の自動車メーカーです。ここは比較的長持ちした会社で1955年にシトロエンの傘下に入り、 乗用車の生産こそ1960年代に終了してますが、軍事車両のメーカーとしては健在です。
 赤茶色の6番はフォードモデルRで、これはあのTタイプの直前に発売されたタイプなので、 どこかシルエットが似てますね。Tタイプが発売されたのが1908年の秋で、 グレートレースには間に合ってないので、その「代理」的登場でしょうか?
使われているクルマはいずれも、そのクラシックカーのホンモノではなくてレプリカっぽいので まぁどれもそれに似たクルマってことで(笑)。異論をお持ちの方はどうか御指摘下さい。m(_ _)m
一方、史実では妨害工作があったかどうかはわからないものの(笑)、 フランスの2台(シゼール・ノーダン、モトブロック)がスタート早々にリタイヤ。 映画では残った3台がレースを繰り広げますが、 史実では4台(トーマス・フライヤー、プロトス、ジュスト、デ=ディオン・ブートン)。 映画ではそのうちの1台が途中でリタイヤしゴールインしたのは2台ですが、 史実では3台(トーマス、プロトス、ジュスト)。 映画では2台がゴール直前でデッドヒートしますが、史実ではゴールイン間隔は非常に開いており、 1位と2位の間は役半月、3位に至っては2月以上遅れていたそうです。ちょっとこのあたり、 現代の我々の想像を超えてますが、その間、開催側はどうやって待ってたんでしょうねぇ?(笑)
優勝をアメリカにさらわれ、ゴールインできたのも生け贄用だった3台のみで、 フランス勢は全滅に終わったこの現実のグレートレース。 そのため開催後はフランスでは大いに盛り下がってしまったようで、 映画化がハリウッドによってなされたのもその辺に原因がありそうです(笑)。
 映画化で足されたウーマンリブの伸張とか、酒場での乱闘やパイ投げなんてのはまぁ、 当時の感覚での映画として成立させるためのオヤクソクですかね? 確かにこの映画でのナタリー・ウッドはセクシーでキュートだけど、 延々と繰り広げられるトンマなギャグは今となっては閉口せざるを得ないんですが…。 そうそう、史実では女性ドライバーなんて参加していないのはもちろんです。
今回取り上げるミニカーはモトブロックです。モトブロックは1902年から31年までボルドーに存続した 自動車メーカーですが、ここに関しては非常に資料が少なく、日本語でヒットするのは ウチの前の記事と、オリジナルグレートレースについて簡単に触れたページと、それから、
 このアールデコ調のポスターに関する記事だけでした…_| ̄|○
英語でもあまり事情は変わらず、フランス語だったらもっとまとまったページがあるのかも 知れないけど、読めまへん(泣 で、乏しい資料を読んだ限りでまとめると、モトブロックはシャルル・スコーデル?( Charles Schaudel) という人物が他社で自動車製造に関わった後、最初に自分の名前を冠したSchaudelという オートバイを足かけ3年作った後に設立した自動車メーカーのようで、 自分の名前でなく、発明したエンジンにちなんだ名前を社名にした最初期の例だということです。 まぁでもスコーデル氏も最初は自分の名前の会社を作ってた訳だから、 それが傾いた時に借金のカタに押さえられて、同じ名前では新会社を立ち上げられなかっただけ のような気もしますが(笑)。 その発明したエンジンというのは2シリンダーだけど分かれてないモノブロック構造になっていた そうですが、クルマの構造に疎い私にはどうすごいのか全然ワカリマヘン、スンマセン。m(_ _)m
このメーカーは1910年前後のレースにはけっこう顔を出しており、グレートレースの他にも、 1903年の「パリ~マドリード」レース、それからこれは架空の世界ですが、
 映画『チキチキバンバン』の冒頭で行われている1908年フランスグランプリの観客席の屋根に、 メルセデスやフィアット、ルノーと並んでモトブロックの名前がデカデカと書かれているところからも、 当時のモトブロックが一流自動車メーカーとして認識されていたことが解りますね。 そんな成功した自動車メーカーであったモトブロックの倒産は、大恐慌のあおりでらしいんですが、 不況で自動車メーカーが左前になるって現実は昔も今も変わりないようです(苦笑)。 こういうメーカーですからミニカーも非常にレアで、RAMIから出るには出てるんらしいんですが、 年代が違うので形が全然違っています。そこで今回は「見立て」のワザを駆使して、 似た感じの無銘ミニカーをそれに仕立てることにしました(笑)。
 お見せしているのはウイスキーのカティーサークが販促用に作ったクラシックカーシリーズの一台で、 縦長のボンネットグリルとそこから上に突き出たヘッドライトが、残されてるモトブロックの参加車の 写真に似ているので採用です。全長約11.2cmのプラ製で、本来は黒い屋根付きなんですが、 今回は外して使っています。ボディの黄色いマークがカティーサーク製を物語ってますね(笑)。
 明るいグレイの色彩も残ってるモノクロ写真から類推できる実車の色に近いんではないでしょうか?
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