 『週刊ヤングジャンプ』9月6日発売号で梅澤春人の『カウンタック』が最終回を迎えました。 この作品は文字通りカウンタックを主役としたスーパーカー漫画で、この10年程、 『頭文字D』『湾岸ミッドナイト』と並び、クルマ好きの感心を集めた作品です。 実際に自分の車をチューンして走ってる層に一番人気があったのが『頭文字D』で、 かつては走り屋でも今は落ち着いた大人層の共感を呼んだのが『湾岸ミッドナイト』なら、 かつてのスーパーカー小僧に昔の興奮を呼び起こさせるのが『カウンタック』で、 国産車オンリーの前2つでは物足りなかった層のニーズに見事応えた漫画でしたね。 この3作品の性格の違いは作者とクルマの実際の関係ともリンクしてるようで、 『バリバリ伝説』の印税で中古のハチロクをチューンして峠を攻めたしげの先生、 昔からクルマ好きでさんざん改造もしまくってきたけど、今は走ってない(らしい)楠先生、 『BOY』の印税で念願のカウンタックを買ったけど、ほとんど走らす腕が無い梅澤先生、 と、その順番で作品中のカーチェイスのリアルさが減っていってるようです(爆)。
リアルさと言えば、『カウンタック』の物語の発端はこうでした。
主人公の空山舜はかつてのスーパーカー小僧で、20代の頃はチューンしたMR2で 峠をかっ飛ばしたものでしたが、34歳を迎える今は平凡な一市民に成り下がり、 女ナシ、車ナシの状態で、ショボい給料の会社さえ生活のため辞められないヘタレ化してました。 そんなある日、彼の元へ25年前に未来の自分へ書いた手紙が届き、それを読んだ空山は 「社長になって金を稼いでカウンタックを買う」という当時の目標を思いだして発憤し、 もう30年オチだし安くなってるかもと今のカウンタックの相場を調べたら、200万程度 しかない貯金ではとても買えないと知り絶望しかかります。 それでも諦めきれない空山は、夜の肉体労働で貯金を増やそうとしますが焼け石に水。 夢を叶える前に廃人化すること必至でしたが、「25年前の自分からの手紙」が メカ好きでコンコルド実機すらコレクションに持つケタ外れの超金持ち浦島龍童に気に入られ、 最高のフケのエンジンを最高のバランスで組み上げられた「奇跡」のカウンタックLP400 (色はミッドナイトブルー)をその時点で彼が払える全財産の250万で譲ってもらい、 夢の扉が開いたのです。
とまぁ、リアルさのカケラも無いシンデレラ男ストーリーで、つまりはこれはリアルな カーバトル漫画じゃないんだよと、あらかじめ予防線も張ってあった訳ですが(笑)、 そこを読みとれぬボンクラもといリアル走り屋からは「走りにリアルさが無いから駄作」 と不評を買ってましたね(爆笑)。だからこの漫画は、スーパーカー小僧のブーム時の ウンチクをそのままぶち込んだような内容になり、主役はあくまでカウンタック、 それも最初の市販型のLP400なんです。たとえ、今となっては遅くたってね(爆)。
実際、発売から30年以上経つカウンタックLP400では、今の実測値で300km/hを越える スーパーカーたちにはかないっこないので、そういう敵とのバトルはできるだけ避け、 戦わざるを得ない時には空山はカウンタックじゃない別のモンスターマシンに乗るとか、 あるいは何らかの理由で相手がクルマのフルスペックを出せない、といった巧い手で、 カウンタックの非力さをカバーするという、作者のカウンタック愛が泣けました。(つД`)
 そういう漫画なので、紹介するミニカーは当然主役といきたいんですが、LP400は 『サーキットの狼』のハマの黒ヒョウのところで紹介した、クワトロバルボーレの ムリヤリ改造品しか持ってないので(笑)、今回は他のカウンタック、空山が借りている アパート大家宅のガレージの、隣家のヒキコモリが持ってたLP500Sを取り上げます。 カウンタック、しかもLP500Sなんてそんな都合良く転がってるシロモノじゃないですが、 この作品ではスーパーカー乗りは引かれ合うというオヤクソクがあるんですね(笑)。 空山が借りてるガレージにも、隣にいつもカバーがかかっているクルマがあったから、 ある日大家さんに聞いてみると、それがなんとディーノ246で、しかもそのディーノにも 沖田のそれと同じ様な悲しい過去があったりするんですが、それはまた別の機会に…。 だから隣のヒキコモリがカウンタックも持っていてもノープロブレム。さらに大家さんも 10年間合ったことが無いという超ヒキコモリに、あっさりと空山が会えてもイイのだ! いろいろお世話になってる大家さんの替わりに回覧板を持っていった空山に、 10年ヒッキーは自分もカウンタックを持ってると告げ翌日改めて家に招き入れ、 ガラス張りに改造したガレージの中に鎮座するLP500S、それも後期の量産品じゃなく、 世界に数台しか無いウルフカウンタックの赤を披露したのでした!
 もちろんこんなものタダのヒッキーに買える訳もないので、いろいろ事情を聞くと このヒッキー君は株の凄腕デイトレーダーで、すでに十億の資産持ちとか… (゚ロ゚ノ)ノ!! たぶん、あのJ・com男をモデルにしたキャラっぽいですが、まソレハオイトイテ、ヒッキー君、 増え続ける資産に疲れ気味でも株取引は止められず、目的の無い暮らしをしていて、 隣の爆音に辟易して偵察したらカウンタックやディノが出入りしてるのを発見し、 子供の頃の夢を思い出して、ルートは言えないが通販でこのLP500Sを買ったんだとか! こちらはウルフカウンタックの日本での著名オーナーだった織田無道が破産したことと リンクさせてやがりますが(笑)、LP500S(赤)は、通説によると石油王ウルフが ランボの工場でホコリを被ってた試作機用の5Lエンジンを見つけ、それを積ませたので LP500の名を得ますが、後に彼はそのエンジンを別のシャーシに積み替えさせて 新LP500を作り、元の赤はそれを隠したまま別のオーナーに売るという 詐欺ギリギリのことをしています(苦笑)。日本に輸入された際も「5Lエンジンで 315km/hを記録したスーパーカーの王様」として各地のショーで展示されましたが、 その時点でエンジンはノーマルの4Lになってた訳ですな…。今日ではその最初の 5Lエンジンを積ませたという話すらマユツバっぽいという研究結果すらあり、 「LP500とイオタに関する伝説」というのは、スーパーカーブームのいかがわしさを 象徴するテーマとなってるので『カウンタック』でも取り上げられたんでしょうね。 そのイオタに関してもこの作品では実に象徴的な役割を持って登場しますが、 それもまた別の機会に……。
 取り上げたミニカーはスーパーカーブームの頃、日本のダイヤペットが出した品です。 ダイヤペットなのでダイキャスト製、1/40で実測約10.4cmのちょっとボッテリした造型で、 『カウンタック』劇中で、浦島の秘書で空山の相談役でもある、クルママニアの早乙女ちゃん (TOPイラスト、最前列右から2番目)が嬉しそうに語るリアウイングの正確なカラーリングが 再現されてないし、取り付けも曲がってたりするんですが(苦笑)、 まあ今となっては、それが味になってるかも知れません。
 昔のミニカーなんでこのようにドア関連はフルオープンするという 魅力的なギミックもありますしね。ヽ(´ー`)ノ (リアのついたては、開いた状態で固定できなかったので撮影時に自作しました)
これがバカ売れしたためにダイヤペットからはスーパーカーがたくさん出され、 ブームを加熱させてくれたんですが、メーカーの生産力には限りがあるから、 その割を食ってこの時代の国産車のラインナップが減らされ、国産車コレクターには 大打撃だったようで、日本ミニカーコレクターの大御所だった、故中島登さんは 生前に苦言を呈してらっしゃいましたね…。ショーバイを考えれば仕方ないことだけど、 当時のダイヤペットはトミカと並び「国産車の立体カタログ」的役割だったのも確かなんで 簡単にどうこう言えない難しい問題です…。
LP500Sはスーパーカーショー巡業の後、松田優作板『蘇える金狼』等の映像作品に出演し、 因業坊主織田無道に引き取られ「新幹線を追い越してやった」とTVで豪語してましたが、 保管状態は酷かったようで、屋根はあっても回りはむき出しの場所に駐車され、 最後の方はボディに錆が浮いた状態になり果てていたそうです。でも今は違うオーナーに 保護されレストアしてもらって、また往年の輝きを取り戻したとか……( ;∀;)ヨカッタナー。
漫画の世界に戻るなら、空山はヒッキー君(教官とケンカして仮免止まりの無免許)の 「一度でいいからLP500Sを走らせたい」との夢を叶えるため、早乙女ちゃんにも相談し、 その結果ヒッキー君の財力にもモノを言わせ、サーキットを丸一日借り切ることになって、 そこで奇跡(空山のLP400)VS伝説(早乙女ちゃん運転のLP500S)の熱いバトルが 繰り広げられたりするんですが、その辺は実際に御自分でお確かめ下さい。
『カウンタック』に関してはまだ語りたいことがあるので、あと何回かやろうと思います。 どうかみなさんお付き合い下さい。m(_ _)m
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