今回の御題も『ナイトライダー』絡みです。リメイク企画が進行中なのは前回お伝えしましたが、 『ナイトライダー』にはこれまでにも「続編」が少なからず作られていたのです。

一番有名なのは1991年に1本だけ作られた『ナイトライダー2000』という作品です。 これは、当時としては近未来である西暦2000年でのナイトライダーの活躍を描こうとした作品で、 ナイト財団も予算繰りは厳しくなっているようですが、なんとか存続し、 デボンも変わらずその指揮権を握っている世界観でした。
ただあろうことか、マイケルはすでに職を辞し、釣りのガイドという気楽な日々を送っていて、 ナイト2000も時代遅れとなり解体処分されているというのです!
ナイト財団のナイトライダー統括部門FLAGは、代わりに新マシン、ナイト4000を完成させますが、 これはナイト2000同様に人格を持つコンピュータ制御のマシンでした。 しかしプログラミングに難があったようで、人間以外の生命を奪うことに何のためらいもない 冷酷なマシンになってしまっており、プロトタイプのKAARを思い起こさせる設定ですが、 3台作ったドリームマシンのうち2台に欠陥があるということは、 ナイト財団、もしくはFLAGの組織そのものに問題があった可能性も大きく、 跡を継ぐはずのマイケルがとうに見切りを付けたのもそのせいじゃないかという気がします。 結局、この新作はシリーズ化されることはなく、赤いナイト4000も賛否両論なんですが、 私自身はけっこう気に入っているマシンです。

このナイト4000のアイテムと言うと、正式には1つしか出ていません。 それがこちらのBOXのAMTのプラモデルです。当時、輸入プラモ店には並んでいたので、 車モデラーの方ならMPCのナイト2000と共にストックされているんじゃないかと思いますが、 この4000を完成させたという話は、あまり聞いたことはありません(笑)。

この独特な形状のナイト4000は、ナイト2000がポンティアック・ファイヤーバード・トランザムなので、 当初は同じくポンティアックのコンセプトカーであるバンシーの88年タイプだと思われていました。

こちらがそのポンティアック・バンシーですが、けっこう有名なクルマで、 1993年製作の『デモリションマン』という映画にも登場し、 その際にホットウィールから商品化もされています。
ナイト4000とバンシーを良く見比べてみると、イメージはよく似ていますが、 全体のシルエットと細部のディテールがけっこう違う点に気づきます。 だから、もしナイト4000がバンシーベースなら改造してあることになりますが、 市販車のトランザムとは違いワンオフの試作車を、発表からそれほど経たないうちに改造して 潰してしまうだろうかという疑問が生まれるし、時系列的に考えても、 『デモリションマン』にまた出ているので、これはありえないことになります。
ではこのナイト4000とはいったい何であるかというと、どうもこれ、ダッジ・ステルスを バンシー風に改造した車であるらしいとのことです。

ダッジ・ステルスとは何を隠そう、三菱GTOのアメリカ仕様車のダッジ取り扱い版のことですが、 ステルスがベースと明記してある海外サイトもあるそうだし、GTOのオーナーがナイト4000を見て、 内装やドア回りが同じことに気づいた例もあるようなので、まず間違いないでしょう。 バンシーにステルスのドア等のパーツを取り付けたんじゃないかという考察もありますが、 ボディの外観を作り替えるのはただの板金作業で、町工場レベルでも出来ますが、 全く違うクルマのドアを流用するのは、その寸法から取り付け金具から 全て一致してないと不可能なので、TVのパイロット版の制作費では不可能だと思います。
ここから先は完全な想像ですが、製作者は本当はナイト4000のベースにバンシーを 使いたかったのに、そのラフな撮影にポンティアックが難色を示し、 その言わばレプリカとして、ステルスを改造して使ったんじゃないでしょうか? ポンティアック側の同意無しには、ここまでそっくりな外見で通る訳がないですもんね(笑)。
ということで、今日はここでやっとコレクションの披露と解説に入りますが(笑)、 これは途中で話に出た『デモリションマン』版のホットウィールのバンシーです。 バンシーというのは本来、スコットランドに出る女の妖怪のことで、 亡くした子供を偲んで、夜な夜な泣き叫ぶという伝説があります。

この『デモリションマン』版のホットウィールはトミカサイズのミニカーが全部で9種類あり、 左のブリスター表では下に妙に開いた空間にしか見えないプラケースを9個コンバインすれば、 右の裏側のように映画の背景がそのバックに大きく広がるディスプレイケースになるという、 たいへん凝った趣向が凝らされています。 しかし、映画がイマイチ面白くなかったのと、クルマの活躍がほとんど無く、 背景に置いてあるだけのが多かったので、全部集める意欲が湧いてきません。 と言うより、正直、ナイト4000に似てたから買ったんで、 『デモリションマン』(゚⊿゚)イラネ 、って感じです(爆笑)。
どうして、1991年に甦った「現代の正義の騎士」のクルマが、 火の鳥から女怪バンシーに変更されたのか、興味深いものがあります。 このナイト4000がレーザー砲を装備していたことと、パイロット版以降は、主人公をマイケルから 上のイメージ写真では彼の隣にいる女性キャラに変更するつもりだったことが推測できるので、 その辺りに引っかけたんじゃないかって気もしてますが、この設定は不評を買い、 シリーズ化はならなかったので、永遠の謎となってしまいました。
『ナイトライダー』シリーズは、次の『ナイトライダー2010』ではさらに変更を加え、 全く違う世界観でドリームカーに女性の人格を与えるという愚行を犯してしまい、 今度は不評どころか総スカン状態でまたしても1本だけで終了してしまいます(苦笑)。

焦った製作陣は、その次に製作した日本未公開の『Team Knightrider』では、 ナイト財団のいる世界観に戻したのはいいものの、またしてもマイケルの不在と 今度はドリームカーを数揃えるというアサッテの方を向いた強化策を打ってしまい、 結局、1シーズンのみで打ち切られてしまいました……。
結局、ナイトライダーの魅力とは、イカシたラテン系のアンちゃん&、それとは好対照の、 冷静だけど人間味のあるコンピュータによる凸凹コンビの醸し出す味と、 ドリームカーを使った痛快アクションの両輪が揃って成立するものです。
主人公を女にしたら女性ファンは興味を失うし、 コンピュータの人格を女にしたら、女性ファンの嫉妬を生みます。 主人公を堅物にしたら、話が盛り上がらないし、色気不足で男性ファンは退屈し、 複数にしたら、それぞれの魅力が薄れます。
つまりデヴィット・ハッセルホフのマイケルと、KITTのコンビは黄金のバランスを保っていた訳で、 ここを理解しないまま、リメイクを試みても失敗するだけでしょう。 今度のリメイクでは『ボーン』シリーズの監督を起用という時点で一抹の不安を感じますが、 まぁ期待半分、恐れ半分で待つことにしましょうか?(笑)。
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