今日の御題は『女王陛下の007』です。1969年に公開されたこの映画はジェームズ・ボンド役が ジョージ・レーゼンビーに変わったため、当時の頭の固いファンにはあまり好意的には 受け入られなかったんですが、その後ボンド役者も増え違和感が無くなってみると、 原作に忠実なリアル&ハード路線が高評価されるようになり、今日では傑作とみなされています。 車は同じアストンマーチンでもDBSがボンドカーとして起用されましたが、秘密兵器が 一切装備されていなかったためか公開当時はコーギーのミニカーとしては発売されず、 この作品でのタイアップ商品化は小スケールのコーギーロケットでのボブスレーや、 トレーシーのマーキュリー・クーガーや、それとチェイスするミニやフォード・エスコート、 ベンツ等になってしまいました。 ちなみに実はこの時、DBSがコーギーの小サイズのラインアップの中にあったんですね。 それなのにOHMSSシリーズに加わらなかったのは、コーギーコレクターにも謎とされてます(笑)。 (参考資料) 後の「ジェームズ・ボンド・コレクション」でようやくボンド仕様のDBSが出ることは出たんですが、 雑な仕上げな上にスケールが1/36相当と、ちょっとビミョーな出来映えだったのは残念でした。 また最近、海外では例のジオラマ付き1/43ミニカーで出たようですが、日本では未見です。 という訳で、今回お見せしているのはボンド仕様ではない、DBSのミニカーです。 これはボンドミニカーが不毛だった1990年代後半に青山のメイクアップで見つけた ホワイトメタル製の(たぶん)ハンドメイドのミニカーで、メーカーはSMTS。 1/43スケールで全長10.7cmです。 商品名はアストンマーチンV8ですが、それはDBSの後期の呼び名で外見上は大差ありません。 ちなみにクレイグ版の『カジノロワイヤル』に出てきたクルマもDBSだったことからお解りのように、 アストンマーチンはけっこう同じ名前を使い回してるんですよね(笑)。 「V8」という名前もそのまま『リビングデイライツ』に使われたタイプにも使われているし…。 このミニカーの普通のミニカーより重い手にズッシリくる感じはホワイトメタル製ならではで、 仕上げの丁寧さと共に、定価で19000円の当時としては最高級ミニカーらしさを醸し出しています。 実はこのDBSの劇中での色は、この写真のようにもう少し茶色っぽいはずなんですが、 これを上手くリペする自信がないのでこのままです(笑)。 この『女王陛下の007』は、唯一ボンドが本気で結婚する作品です。 その相手はユニオン・コルスの首領マルク・アンジュ・ドラコの一人娘トレーシー。 ダイアナ・リグ扮する彼女はテレサという本名を嫌って 男名前であるトレーシーを名乗るような奔放な女でしたが、 それは先の結婚の不幸と授かった子供を亡くした自暴自棄状態のためでした。 最初、この映画を見た時は私もまだ10代で、トレーシーを全然いいと思わなかったんですが、 年を取るに連れて、その魅力がよく解るようになってきました。 特にスケート場で追っ手から逃れようと顔を襟で隠しているボンドの前に現れた時の 彼女の姿の頼もしさといったら…。 単なる色恋沙汰じゃなく、人生を共に過ごせる女の魅力がトレーシーには溢れています。 そのかけがえの無いトレーシーと初めて会ったのも、 このアストンマーチンDBSに乗っている時だったし、そして別れもこの車でした……。We have all the time in the world. というのはこの作品中でボンドとトレーシーが 幾度となくささやき合う言葉です。セリフとして訳されている時は 「ぼくらに時間はいくらでもあるさ」みたいな感じになり、 ルイ・アームストロングが歌うこの映画の主題歌としては「愛はすべてを越えて」となります。 この映画のラストで結婚式からDBSでハネムーンへと出発したボンドは、 イルマ・ブントとブロフェルドに襲われ、機銃掃射を浴びたDBSの車内で トレーシーが額を打ち抜かれ絶命しているのをみつけ、 その亡骸を抱きしめながらこの言葉をつぶやき、嗚咽します…。 次回作の『ダイヤモンドは永遠に』の冒頭で、Qがこの車のフロントに6連装ロケットランチャーを 装備しているのを見た時、ああトレーシーを奪われた恨みは大きかったんだなぁと思いましたが、 その後その車を使うことは無かったのは残念でした。でもよく考えると全体がお気楽ムードの あの映画にはそぐわない感じもあるので、それで良かったのかも知れません…。 劇中ではあまり活躍しなかったけれど、一番印象に残るボンドカー、 それがこのアストンマーチンDBS(69)なのです。
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