 石原裕次郎二十三回忌記念として『西部警察』の傑作選が放映され、 その皮切りとして東京圏では5/23に「無防備都市」前後編が一挙放送されました。 断片的にはよく見てるんですが、全体を通して見るのは実に久しぶりで、 この年齢になってじっくり腰を据えて観ると、昔は見えなかったものがいろいろと見えてきます。
まずは最初、レディーバードが暴れ出す前に市民から西部署に通報されてるんですが、 それを係長が聞き流してしまっていること。その時に対処すればよかったんじゃないかと思わせつつ、 レディバードが街を縦横無尽に走り出した後も、実はそれほど被害は出ていないことにも気づきます。 そう、この装甲車、勝手に走ってるけど、民衆に向かっては機関銃も撃たないし、主砲を発射したのは ヘリコプターに対してと、前方のパトカーを蹴散らす時等のわずかな回数だけなんですね。 しかもそのうちヘリコプターに対しての発砲は、爆発のアリモノ素材をオーバーラップさせただけの 手抜き特撮なんでドッチラケでした(笑)。まさかレンタルのヘリを爆破する訳にもいかないだろうから、 せめてミニチュア破壊くらいはやってほしかった…。
さすがにパトカーは豪快に吹っ飛ばしますが、これだけじゃあな~。 TV朝日へ乗り込むので、ここをミニチュアで吹っ飛ばすのかと期待してたら、 また機関銃を撃つだけと、本館の前にあからさまに急増した感じの プレハブ小屋に突っ込んで壊すだけでした…。 まぁそれでも、放送してる局そのものを襲うというのはタブー中のタブーのはずなんですが、 『西部警察』が1stエピソードでその禁じ手を使ったのには理由があると思います。
 実はこの『西部警察』という番組は、その直前まで日本テレビ系でやっていた『大都会』の 焼き直しというか、局を変えての再開みたいなものだったので、 チャンネルが変わったことを視聴者に強く印象づける必要があったんじゃないでしょうか? 上の写真はその『大都会』の通称「黒岩軍団」ですが、7人中4人までもが 『西部警察』のメンバーとして登場することになりますから、違いが解りにくいですよね(笑)。 スリリングな音楽に乗って、劇中何度も何度も「テレビ朝日」と繰り返されるもんで、 一般視聴者にはその局名が強く印象づけられたでしょうが、 特撮マニアにはとある理由で、また違う局の印象が焼き付いてしまいました。 それはどういうことかと言うと、バックに流れているスリリングな音楽が、 なぜかフジテレビの『スペクトルマン』の印象的な曲と同じだったんですよ(爆笑)。
この曲は実は『大都会』でも使われていたようで、選曲担当者が同じだったため、 『スペクトルマン』用に作られた音源がライブラリとして使い回されたんだと推測されていますが、 その肝心な『スペクトルマン』のサントラ盤が出ていないので、当時は仰天したものです(笑)。
話を「無防備都市」に戻せば、一番意外だったのはレディーバードによる首都蹂躙が 単なる犯罪じゃなく、日本の国のふがいなさを憂う狂信的国士による犯行だったことです。 この話を紹介するときにはやたら装甲車による破壊ばかりが取り上げられてますが、 お話のキモはそこではなかったんですね…。劇中犯人からいくつかの要求がなされますが、 最初の2つは冗談半分だけど、3つ目の本当の要求と称するものが 「午後3時までに全犯罪者を釈放し、警察は手出しをしないこと」というもので、 これが実行されれば日本はまさに「無防備都市」状態になります。
 もちろん、そういう状態になることは耐え難いんですが、大門軍団も金魚のフンみたいに 装甲車の後を付いて回るだけで、ゲンの独断によるダンプカーアタックも無力だったし、 ようやく木暮課長が上に掛けあって許可が下りたダイナマイトでの爆破も効果無しなんで、 見てる側もいい加減ジリジリしてきます。 装甲車の1台ぐらい自衛隊の戦車隊で囲んじゃえば制圧できるだろうに何でやらないのか、 やっぱその辺はTVの限界なのかと画面に対し悪態を付き始めたりしたんですが、 実はそこに大きな罠があったんですね…。
実は犯人の本当の狙いというのは、全犯罪者の釈放なんかにはなくて、 今の日本の秩序を維持している警察の無力をアピールし、警察が歯が立たない装甲車が 自衛隊(劇中では防衛隊と呼称)により鎮圧されることでその有用性を国民に知らしめ、 武力により統制される新しい日本を創り上げることにあったんですね…。 つまり「無防備都市」とはテロによって引き起こされる状態だけではなく、 その時の日本のことを指すダブルミーニングだったんですよ…。 世界有数の戦力を有しながらも、それを必要な時に使うことができない 現代日本のこの状態は無防備も同然で極めて危険であると!
東宝特撮を見慣れている当方としては、フィクション世界での戦車の出動なんて 日常茶飯事になってましたが、確かに刑事ドラマ世界ではあってはならないことで、 自分のその辺の感覚のマヒ加減をちょっと反省しますた(°∀° )。
でも『西部警察』は1回目にしてイキナリ、よくもこんな重いテーマをぶつけてきたもんだと思いますが、 そのことがほとんど語られないのは、やはり部分部分のアクションの派手さが目くらましに なっているんだろうし、わざとかも知れませんが、脚本もちょっと説明不足だからでしょう…。 私がこの真のテーマに気づいたのは、途中で挿入される「レディーバードの前に飛び出した母子を、 車体が傾いて不安定になるほどの急ハンドルを切って回避したシーン」を不思議に思ったからです。 名も無い母子など、本当のテロリストなら躊躇無くひき殺すのが普通でしょう。
「轢かなかったのはTVではそういう残酷描写ができないからにすぎないんじゃないか」という 考えの方もいるかも知れませんが、見せられないシーンを脚本に書くプロの脚本家はいません。 あそこは轢かなかったことを見せる必要があったから書かれたシーンで、それはつまり、 レディーバードを操縦してるのがただのゴロツキじゃないことを際だたせるためな訳です。 「国を守る」とは国土だけでなく、そこに住む家族の安全を守ることです。 「幼い子とその母」というのはその家族の象徴であり、 だからこそ国を守りたい思いで行動しているレディーバードは、 絶対に轢いてはいけないんですね。
この事件の黒幕である大河内は三島由起夫的雰囲気を持っています。 若い剣士に守られて暮らし、覚悟を決めてレディバードに乗り込む際は詰め襟と鉢巻きに身を固め、 最後は燃えるレディーバードから逃げずに「日本よ、目覚めよ!」と叫んで玉砕していったその姿は、 あの市ヶ谷駐屯地で腹を切った三島の最後と重なります。
 三島があの壇上から訴えたものは何であったか、それは、憲法第9条を見直すことによって 自衛隊の名誉を回復することと、日米安保体制から脱却し自主防衛を計ることでした。 こう考えていくと『西部警察』の最初のエピソードは間違いなく、 三島由紀夫に捧げられたオマージュだったのでしょう……。
暴力に訴えるという方法は間違っていたけども日本の行く末を誰よりも強く心配していた彼らを、 嘲笑したり憎んだりすることは私には難しいです。 あの頃から30~40年が立ち、日本が置かれている危機的状況が、 当時とは比べものにならぬほど切迫している今日となれば尚更です。
幸か不幸か、今日の日本では「無防備」という言葉には極めてウサン臭いイメージも つきまとっています。よくからかいの対象になっている「無防備マン」はもちろんのこと、 日本の地方都市の中にはその歴史や有効性をよく確かめずに採択してしまったところもある 「無防備都市宣言」を支持している政党が社民党だけであるということからもよく解るように、 反日勢力による日本弱体化工作の一環としか思えないのが実状です。 テレビ朝日もそういう勢力との癒着がささやかれているメディアですが、そのテロ朝もといテレ朝で 今日、この「無防備都市」が放送されているという事実は心地よく、 テレ朝は「無防備都市宣言」に賛同してるそうなので、たぶんタイトルに騙されてるんでしょうね(笑)。 このあたり、普段は『傷だらけの天使』や 『太陽にほえろ!』等、切れ味鋭い脚本を書くことが多い 永原秀一が、わざと解りにくい脚本を書いたのであろう作戦勝ちというところでしょうか?
タイトルとは裏腹にこのエピソードは単なる「戦争反対」を唱えるサヨク的視点から書かれては いないんですよね。防衛隊の出動を押さえ込むために木暮課長は会議で熱弁を振るったことが 語られますが、それと同時に行きつけのスナックに古い友人である 防衛隊のけっこう高い地位にあると思われる制服組を呼び、どうすべきかの相談もしています。 つまり木暮はもし本当に必要ならば、防衛隊の出動も仕方ないと考えていたんでしょう。 今の秩序を守るための努力は惜しまないが、最悪に備えての配備も怠らないのが、 まっとうな判断力を持ったオトナの対応というもので、無防備でいれば安心なんてのは アタマにお笑い草が咲き誇るお花畑が考えることですわ……。┐(´ー`)┌
今後、『西部警察』自体の人気は続いているのに「無防備都市」が再放送されなくなった時が もし来たら、その時こそ、工作が成功し、本当に日本が無防備化してしまった時なんでしょうね……。 もちろん、そんな日が来ないことを、私は心から信じていますが。
 『無防備都市』の記事が長くなったので、ミニカーの解説は短めに(笑)。 旧タイプの機動隊バスで、ダイヤペットの都内バスをリペして小改造したモノです。 全長約13cmで、スケール的には1/60程度でしょうか? 『西部警察』の劇中、主役を張るようなクルマではありませんが、 上の議事堂前の金魚のウンコ隊(笑)の中にも写ってるし、 エンディングの軍団大暴走(笑)シーンにもちゃんと後ろの方に確認できる等、 そこそこ存在感はあるクルマです。
改造ポイントは色と、サイレン、それから窓の網の取り付けです。この網は暴徒の襲撃から 乗組員を守るために付けられてるんでしょうが、徐々に厳重になっていって、 最近のタイプではついにサイドの窓は全部鉄板で覆われてしまったようです……。 サイドの白線の位置が上の実車の写真と違いますが、 ミニカーの方は実はダイヤペットにこの仕様の商品も出ているので、それに合わせてあります。 また線がヘロってますが、最初はちゃんとマスキングしようとしたら塗料の喰い付きが悪くて、 塗装面がハゲまくったんで、泣く泣くやり直して、フリーハンドで書かざるを得なくなった結果です…。 スゴ腕モデラーの方々からはお叱りを受けること必至ですが、 まぁ決して、最前列に出ることはない脇役メカなんで、これでカンベンして下さい。m(_ _)m
『西部警察』傑作選の放送はまだしばらく続くとのことです。 まとまって見る機会は久しぶりなので、楽しみにしています。
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