昨日、7月17日は石原裕次郎さんの命日だったので、今回は久しぶりに『西部警察』を取り上げます。 団長ヘリの回でちょっと触れましたが、『西部警察』にはパート1と2の間のつながりに ちょっと不自然な点があります。行きつけの店が変わり、木暮の親友の朝比奈が消えたし、 刑事の顔ぶれも替わって、ゲンと初代オヤジさんデカである谷さんが何の説明もなく消えています。 これはシリーズものによくある手直しで、コーナーラウンジが消えたのは、 ママがいるセブンにして女っ気の少ないこのドラマに花を添えようとしてだろうし、 谷さん、ゲン、それから明子は役者の都合や制作費の節減じゃないかという考察はすでに書きました。
 このちょっとした齟齬を大胆に利用したのが2004年に復活した『西部警察スペシャル』で、 パート3の最終回で大門を殉職させてしまった歴史を無かったことにするために、 スペシャルの世界は、「コーナーラウンジが再登場するからパート1と直続きで、 パート2以降は無かった世界なんで大門は死んでいない」とメチャメチャな説明がされていますが、 まぁこれはしょうがないでしょうね。大門を殉職させた時はまだ裕次郎御大が生きてましたから、 もし西部警察を復活させることがあっても、木暮の庇護下で、タイショーなりハトなりが新団長を継ぎ、 大門は写真での登場みたいな感じで考えていたんじゃないでしょうか? そこへ裕次郎御大の死去となった訳で、『太陽にほえろ』の方は舘ひろし主演でやってみたものの 今ひとつヒットしなかったので、『西部警察』ではどうしても大門に蘇ってもらう他に 方法が無かったんでしょうね…。
そこで大門課長、鳩村団長の2大看板で臨み、車両も日産に提供を申し出たら断られたので、 こっちは快く再度のスポンサーを了承してくれたオートバックスのつてで自腹を切って 海外製スーパーカー等を揃えたところ、例の事故で放送は無期延期。 2004年にスペシャルだけはなんとか放送にはこぎ着けたものの、 レギュラーはキャンセルされたまま今日に至る訳です…。 日産の協力拒否というのはウィキによると「車を壊すことが前提の番組には協力できない」という 理由によるものだったそうですが、もしこれが本当なら寂しい話ですよねぇ…。 もうこの頃はゴーンの指揮下の縮小経営の時代ですが、かつてあれほど密接に協力し、 各種スーパーマシンの提供はもちろんのこと、街を逃走する犯人の車を発見するのは ほとんど日産の営業所の職員という微笑ましいタイアップもされていて、 日産の企業イメージを大いに押し上げていたと思うんですが……。
 セコイ日産に対し、断られたからと言ってトヨタなりマツダなりに話を持っていかずに、 海外製スーパーカーや、元はトヨタ車ですがオートバックスがチューンし違う名前で売ってるクルマを 自腹で揃えた石原プロは流石は男気がありますねぇ…。 でもそれがあの事故につながった訳なんで、何とも皮肉としか言いようがありません。 なお劇中、一般パトカーとして横転爆破炎上してるのは三菱のミラージュやおなじみのセドリック らしいんですが、タイトルに車両協力としての自動車メーカーの名前は出てこなかったので、 あれらも石原プロが自腹購入したのかも知れません……。
事故の原因はタスカンの超馬力を運転した若手俳優が制御しきれなかったことにあったようで、 マスコミは例によって大げさに騒いでましたが、被害者の方はその後の石原プロ側の 誠意ある対応にも満足し、特に放送延期や制作中止は求めていなかったようですが、 結果としてスペシャルは1年間の放送延期、新テレビシリーズは中止となってしまいました。
このあたりいろいろ考え方はあるでしょうが、元々、渡哲也さん個人としては『西部警察』は あまり好きとは言えなかったことに加え、死んでしまった役をムリヤリ生き返らしての再開、 好パートナーだった日産から断られそれでも仁義を通したことが仇になっての事故と、 こうまで事前にケチが続き、何とか放映したスペシャルも絶賛の嵐とはいえない評判だったこと (視聴者は以前のメンバーでの再開を望んでいた)から、 制作続行にイヤ気がさしちゃったのかなぁ? という気はします……。
 でも、この『西部警察スペシャル(2004)』ですが、いろいろと規制が厳しい現代に よくもまぁここまで頑張ってくれたもんだよなぁという気はしますよね。 人質を取っての立てこもり、バス爆破、フェリー爆破、そして最後の要塞大爆破と、 過去の代表的な爆破事件をキッチリと再現してくれたし、フェリーでは、女性の鳩村軍団員による ボディラインクッキリのレオタードを着た「キャッツアイゴッコ」というお色気サービスまであって、 過去にない大盤振る舞いでした。ヽ(´ー`)ノ
この女性軍団員ですが、かつて木暮とも親しく、大門の盟友でもある日下警視正の娘の直美 という設定です。このあたり時代の流れを感じさせると共に、かつてのパート1の勝ち気だった 古手川アコのキャラクターを発展させたような雰囲気もあるんで、けっこう好感触で見てたら、 いきなり爆弾処理班の制服を脱ぎだしたんで気が狂ったかと思いました…。 どうも「赤外線によるガードを張り巡らせた爆弾を解除するには、少しでもスリムにして その間をくぐり抜ける必要がある」と判断してのことらしいんですが、かなりムリヤリです(苦笑)。 脚本には「全裸で」と書いてあったとのアヤシイ噂もあり、戸田菜穂がこのスペシャル限りで降板し、
 撮影が始まっていたTVシリーズ版では中山忍演じる女刑事に交代してたのは、 この辺も関係しているのかもと勘ぐられています…。
「気が違っている」と言えば、このお話、国際テロ組織のブラックホークが 宮崎で会議中だった世界の警察の要人を人質に立てこもる話なんですが、 その犯罪の動機というのが、「子供の頃、海外で無実の罪で処刑された両親の無念を晴らしたい」 というもので、鳩村から「だったらその国でやればいいのに」ともっともなツッコミを受けるんですが、 それに対し「恨みに国境は無い」と迷いの無い口調で言い切ってました……。 ここまでカンペキに狂っている奴が犯人ではどうしようもないですね……。
 しかも大ボスは最後、生死が今ひとつはっきりしなかったんで、 TVシリーズが始まったら再登場させるつもりだったのかも知れません。 この神田正輝演じる大ボスは、最後の要塞に立てこもっている最中、 バッハの「G線上のアリア」をかけているという趣味の良さを見せますが、 これは兄弟を弔うレクイエムの意味じゃなかったかと思います。 というのも、バッハも早く両親を亡くし兄の助けで音楽家としての基礎を学ぶことができたからで、 つまりはこの兄弟の境遇と重なる身の上だったからです。 兄弟の友愛で「音楽の父」と称せられる存在となったバッハと、同じく友愛はあったものの、 道を踏み外して国際テロリストとなった自分たちを重ね合わせ、 その運命の過酷さに絶望していたのかも知れませんね……。
今回の二十三回忌の再放送でも、2ちゃんではこのスペシャルは「つまらん」の大合唱でしたが、 監督村川透、脚本柏原寛司のコンビはパート1の頃から手がけてる名コンビだし、 盛り込むべき要素もちゃんと織り込んでるし、「つまらん」と言われる原因がよく解りません。 どうも不平を言ってる連中は、(1)ビデオ撮りになって違和感がある、 (2)クルマが外車で馴染みがない、(3)ハト以外のメンバーが新人ばかり (4)爆破がCGばかりになってリアルな迫力に欠ける というあたりを主に問題にしてるようですが、 (1)~(3)は時代の流れでしょうがないってもんでしょう(苦笑)。
 ただ、(4)の不満に関しては同意ですが、日産から正規の協力を断られてるし、規制も厳しいので、 昔と同じにドガバガやるのは無理ですよねぇ…。
 その馴染みのない新人たちのうち、主役級なのが石原プロが「21世紀の裕次郎」としてスカウトした 徳重聡扮する橘で、冒頭は彼のニューヨーク研修の模様が描かれますが、 潜入捜査の際にコンビを組んでいた黒人警官ボブが殉職してしまいます。 そして遺族の妻と娘が出て来るんですが、ここでちょっと驚きました。 というのも妻が白人で、まだ幼い娘には明らかに黒人の血が入っていたからです。 つまり黒人警官のボブは白人を妻にめとって子供をなしてる訳で、 これ、ちょっと前のアメリカ社会ならタブーだったはずです。 制作が今年ならオバマフィーバーで黒人の地位が向上してますが、このスペシャルが制作された 2003年にはそうではなかったし、むしろ2005年に起こったニューオリンズの台風被害では 黒人の貧民層に被害甚大だったのに、ブッシュ政権は特に策も打たず見殺し同然でした……。 そういう人種差別がまだ幅を利かせていたニューヨークで ボブは黄色人種の橘を息子として迎えてくれたそうなんで、 白人・黒人・黄人・混血からなる家族ができていたことになりますから、 ここをもっと掘り下げればおもしろく、橘に「愛に国境は無い」とでも言わせておけば テロリストの心情との対比にもなったのに、何の説明もされないので、 単なる脚本家の無知かもという懸念すら感じてしまいます(苦笑)。
ただラストシーンに、またニューヨークに渡りボブの墓の前で母子とふれあう橘の姿や、 日下警視正の警察葬で涙にくれる直美の姿を挿入してるんで、このスペシャルのテーマが 「家族の情愛」であることは確かで、ということはボブのファミリー構成は意図的だったと解るし、 日下を守れなかったことに対し、木暮の墓に参拝し詫びを入れる大門の姿から、 バラバラなメンツが集まって構成されてきた大門(鳩村)軍団の面々が、 木暮課長ならぬ家長の元のファミリーだったことも描かれ、 つまりそれは石原軍団の姿とも重なる訳ですが、 さて、そのあたりに気づいた視聴者がどのくらいいますやら……。 気付けば「つまらん」なんて絶対に言えないと思うんですけどねぇ……。
 今回の再放送で大々的に宣伝していた7月5日の裕次郎御大の二十三回忌ですが、 石原プロは「5万人に特製いも焼酎&写真集プレゼント、ただし受け渡しは二十三回忌会場のみ」 というコストを考えたら捨て身の動員計画を仕掛けました。 売価なら、安く見積もっても焼酎3000円+写真集2000円の計5000円、 原価で1000円+500円の1500円、これを5万人分だから、7500万~2億5000万円分をプレゼントし、 しかも国立競技場で行われる法要は入場無料なんで、その分の経費もかかるし、 全部計算したら3~5億くらいは持ち出しになったんじゃないでしょうか? 実は「今回の二十三回忌を最後に石原プロは解散する」というウワサさえ立っていたんですが、 この大盤振る舞いを考えたらそのウワサにも信憑性が出てきます。 まぁ今回の全国再放送の放送料も少しは入ったでしょうが、それにしてもすごい出費だと思います。
 会場の中に裕次郎の菩提寺である横浜の総持寺を模した「裕次郎寺」を建立したんで、 罰当たりなファンは「最後に爆破するに違いない」と言ってましたが、そんな訳ゃありませんね(苦笑)。 これは、十三回忌の際にあまりに多い人出で寺の周辺に迷惑をかけたんで、総持寺との協議の元、 決めたことだそうで、寺も僧侶の出張と本尊の貸し出しを快諾してくれたそうです。
 結局、石原プロの「仕込み」は大成功で、5万人に対し、75万1170通もの応募があったそうです。 当日の詳しい式次第について石原プロ側から説明があまり無かったため、 高齢者が多いことが予想される実際のファンである参拝者の健康が心配されたんですが、 当日はちょうどいい薄曇りで、雨男だった裕次郎さんの法要はいつも雨のジンクスを破ってくれました。
フタを開けてみると、参列者は一旦スタンドに入り、スクリーンに映し出される様々な縁の映像や 三百人のコーラス隊によって歌われる裕次郎ソングの合唱を見たり聞いたり歌ったりしながら、 焼香や記念品交換の順番を待つという、なかなか合理的なシステムになっていて、 一番の混雑時で4~5時間待ちだったようですが、幸い大きな混乱は起こらなかったようでした。
 式典が始まってすぐ、渡哲也社長の音頭で、天国にいる裕次郎に呼びかけようと、 「裕ちゃ~ん」コールがスタンドいっぱいの人たちによって巻き起こり、 石原プロの普段の結束を知る者からすれば、こういうくだけた感じは珍しいなぁと思っていたら、 やはり渡氏も「裕ちゃんなんて呼ぶのは初めてですよ」と語っていたし、 他のメンバーも舘・神田の両巨頭は「とても呼べなかった」、 甥の石原良純は「小さい声で呼びました」と それぞれの個性と立ち位置に応じたコメントを発しているのが微笑ましかったです。
考えてみれば、一番苦しかった時期の石原プロを支え、自らの役者生活の幅を狭めることも厭わず、 『大都会』や『西部警察』というタイプキャストを演じ続けた渡哲也だからこそ、 それももう、締めの法要である二十三回忌の席だからこそ、 テレながらも発することができた「裕ちゃんコール」な訳で、 きっと裕次郎御大も雲の上で、ニッコリ笑って応えてくれていたに違いありませんよね……。
最終的には11万6862人(主催者発表)の人出だったようで、7万人収容のスタンドが一時は満杯になり、 「石原裕次郎の人気は健在」というアピールには充分すぎる効果あったと言えるでしょう。 60万人以上が無料の焼酎&写真集セットには応募しても、会場にはこなかった計算になるし、 ヤフオクには三万五千円程度で売りつけようとするフトドキ者が続出しているようですが、 そういうバチアタリは、団長の鉄拳制裁でも受ければいいんですよ(苦笑)。
「大きな映画1本は軽く作れる費用をかけてますが、今までも供物は一切いただいておりません。 大がかりなイベント法要はスタッフも高齢化しているのでこれが最後です」と語っていた 石原プロの大番頭であるコマサこと小林専務もこれで一安心でしょうね…。
幸い石原プロの解散宣言も無かったし(笑)、『西部警察』の再放送が平日午後2時という 条件のあまりよくない時間帯にもかかわらずけっこうな高視聴率を取ったことから、 このコンテンツの底力をテレビ朝日も痛感したろうし、 やはり宙ぶらりんのママの新版『西部警察』の制作再開を大いに期待したいところです。
 さて、今回のミニカーは本来なら2004スペシャルのクルマを取り上げるのがいいんでしょうが、 正規商品は無いし、今現在、ちょっとケチが付いちゃってるんで、集める気になれません。 そこで今日は、アオシマから発売中のダイキャスト西部警察シリーズのマシンRS2をお見せします。
アオシマからはかつてコールドキャスト製のCCシリーズでかなり数多い西部警察車両が発売され、 当ブログでもいくつか紹介済みですが、今年になってダイキャスト製の新シリーズを発売開始し、 すでにマシンX、マシンRS1は発売済みでした。 ビンボーな私はこの2つは他のシリーズで出たのを持ってるのでスルーしていたんですが、 RS2は未入手というか、同じRSをいくつも買ってもしょうがないと思って手に入れてなかったのが、 今回の二十三回忌による西部警察マイブーム復活で、RSフォーメーションの動画を見たりしたので、 やはり3台欲しいなぁとヤフオクを張ったりしてるうちに、ちょうど新発売のタイミングと重なったので、 当ブログには珍しく、現行品の新品の登場とあいなりました。ヽ(´ー`)ノ
 さすが最新の製品だけあってほぼ完璧と言っていい出来映えで、 窓の反射で上手く写真は撮れませんでしたが、室内のコンピューターも細かく再現してあります。 RS2の外見の最大の特徴の、室内からリアへ伸びるループアンテナもしっかり取り付けてあり、 たぶんこれはダイヤペット版には無かったと思うので、うれしい進歩ですね。 ただしダイヤペットはトランクが開閉可能で、リア内部のメカまで再現されているそうなので、 全体的には一長一短という感じでしょうか…。 両者の細かい比較はいずれRS3が手に入った時に徹底的にやるんで、どうかお楽しみに!
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