特撮マニアに「バロンシリーズ」と呼ばれる実写版ロボット番組があります。 『スーパーロボットレッドバロン』『スーパーロボットマッハバロン』の2つを数えることは定説で これらに『小さなスーパーマンガンバロン』を加えるかどうかは意見の分かれるところですが、 私は『ガンバロン』は見たことないので、当ブログでは前2つについて主に書いてみます。
 『レッドバロン』は番組スタートは 1973年7月4日と「マジンガー以後」ですが、 企画のスタートは『マジンガーZ』放送以前で、決して後追いではなかったらしいです。 日本テレビ関係の人物2人(日本テレビ音楽の渡辺一彦と、日本テレビの斎藤汎司)が 中心で企画された『レッドバロン』でしたが、彼等は番組プロデューサーではないので、 個人の趣味扱いで会社のバックアップは得られなかったため、外部にも人材を求め、 講談社『テレビマガジン』編集長の協力を仰ぎ、その線で野口竜氏を紹介され
 ビジュアル面を担ってもらう体制が整ったということです。 やがて企画が練り上げられて行くに連れ日テレの編成もその対処に困ったのか、 最終的にはできあがった企画を一旦宣弘社へ譲渡し、宣弘社の制作する番組として 日テレでの放映が決まり、さらに実際の撮影は日本現代企画へと下請け発注されるという オトナの事情で何重にも縛られた玉虫色の製作体制が整い、なんと渡辺・斉藤・野口 の3氏は「原案」としてクレジットされるに止まっている体たらくでした…。
 オトナの事情と言えば、この番組のメインスポンサーに決まったのが日本空気販売という 「100円で一定時間稼働するレンタルクーラーの貸し出し」を行ってる業者で、本放送では 「戦うレッドバロンのコックピットが敵の攻撃で高熱になるも、100円クーラー稼働開始で 主人公はスッキリさわやか」という実に印象的なCMが流れていましたが、 放送途中でオイルショックの影響を受けて倒産。以降の制作費の調達が困難となり、 高視聴率を上げていたにも関わらず1974年3月末での終了を余儀なくされています。
家電業界の売り上げ減で単独出資ができなくなった東芝が提案した『サザエさん』の 共同提供に乗る企業が多数有ったように、人気番組をスポンサー撤退で打ち切るとは あまり例のない話で、クールの切れ目には来ていたから新規スポンサーを募ることも できたろうに、それをしなかったのは、込み入った製作体制のために心骨注いで 動く人間がいなかったせいでしょうね…。 日テレ的には「ウチは放送枠を提供しただけで、外野が勝手にやった番組だし…」、 宣弘社的には「ウチは頼まれて製作引き受けただけで、丸投げ企画だし…」、 日本現代企画的には「ウチはただの現場で、製作費調達は仕事じゃないし…」ってな感じで、 実際に番組を練り上げた渡辺・斉藤・野口の3氏は悔しかったに違いありません。(ノД`)
このようにオトナの事情に翻弄された『レッドバロン』ですが、元々の企画者である 渡辺・斉藤の両氏は一体どこからこの発想を得たのでしょうか? 1話冒頭で描かれる「世界各国の巨大ロボットが出展された万国ロボット博覧会」という 設定は『鉄人28号』でおなじみだから、それが発想の原典だったことは間違いないでしょう。 「ロボットvsロボット」という戦いの基本的な構図も『鉄人』でお馴染みだし、 「丸っこい無骨な主役ロボット」という点も同じです。( ・∀・) ただ武器を内蔵していない鉄人に対しレッドバロンは多数の武器を備えていますが、 これは『ジャイアントロボ』からの発想かもしれないですねぇ…。 リモコンの鉄人やGロボに対し、内部に乗り込んで戦うところがレッドバロンは違いますが、 企画時期的にマジンガーZの影響とは考えにくく、他に理由はあるようだがはっきりしません。 ただ起動時に、操縦桿を握った際に検出される指紋と掛け声の声紋が登録済みのと同一か どうか判断するシステムを搭載してるため、登録した紅健以外は動かすことが出来ないのは ジャイアントロボと同じで、鉄人やマジンガーが誰でも操縦できる点と違って、 貴重な見せ場となるロボットの争奪戦を描く気が無いことは興味深いです。 『鉄人28号』大ヒット以来、巨大ロボットものは細々とですが続いていたので、 渡辺・斉藤の両氏がそれらに親しんでいたとしても何の不思議も無く、 もう少し具体化が早ければ、特撮巨大ロボットがもっと人気を呼んだだろうに という気がしないでもないです…。
さて『レッドバロン』のマーチャンダイジングですが、メインスポンサーが特殊な業界 だったせいもあるのか、オモチャは版権の独占契約を結ばなかったようで、 プラモデルはマルイ、日東、ブルマァクから出ていたし、ソフビはブルマァクが大小出して、 変身サイボーグの変身セットがあったからタカラも、さらにはジャンボマシンダーまで 出ているから、バンダイも絡んでいたことになります。 これだけのオモチャメーカーが絡んでいるんだから、クーラー屋の後釜として 共同出資を持ちかければ、あと1クールの延長も十分可能だったじゃないでしょうか? もっとオモチャ会社に積極的に働きかけていれば、第3クール強化案として登場した スペースウイングスの商品化も実現したろうに、返す返すも残念な話です。
 その中で今回紹介するのはマルイの(リモコン操作)レッドバロンで、放送開始時期に 発売された中ではもっとも劇中スーツのイメージを再現していたアイテムでした。
 ロボットの硬質感を出すため、ラテックスじゃなくわざわざグラスファイバーで制作された レッドバロンの撮影用スーツはそのかいあって、フォルムは丸いけどモールドはシャープ という矛盾した質感を持ち(笑)、いかにもロボットっぽくて良かったです。( ・∀・) ジャイアントロボのスーツが当初のプラスチック製から硬質ゴム製に変更されたのと 真逆ですが、それぞれのロボットのキャラクターの違いが出ているエピソードですよね。
 このマルイのレッドバロン、プラモだけあって丸みとシャープさは見事に両立されていて、 リモコン操作のモーター動力でのスリ足歩行もいかにもロボット玩具の王道で良かったです。 マルイは以前にキングロボ(Gロボパチ)とスーパーロボ(鉄人パチ)というオリジナルの ロボットプラモを出していましたが、その経験が生きたということでしょうか? 胸の三角穴にはミサイル発射ギミックが付いていたが、残念ながら紛失してました…。('A`)
(参考画像) またこの時期には珍しく、敵ロボットの飛竜も同規格で同時発売されていましたが、 当時の定価700円は、標準的な小学生の1月分のお小遣いを超える金額だったので、 両方は買えず、飛竜はだれかブルジョワな奴に買われていきました。(つД`) ちなみにこのマルイのレッドバロンシリーズ、700円のこのサイズのは二回に渡って 金型の補修を受けマルイのオリジナルロボットとして再販されたので、もはや最初の形での 再販は不可能で中古市場に出ると高値、特に飛竜はトンデモナイ金額となります。('A`)
まぁこのプラモにこだわらなければ、レッドバロンのオモチャは今日に至るまで 細々とですが出続けているので、何かしら手にすることは可能ですね。 最近でも食玩やガチャポンの類が出ているのでオクを捜せば見つかるでしょう。 しかし、私の場合は、このマルイのレッドバロンを持っていたがために、 ある憂鬱を抱え込むこととなってしまいましたが、それはまた次の機会に…。
テーマ:ホビー・おもちゃ - ジャンル:趣味・実用
|