今回は2巡目なのでトイガンのターンです。以前、ウッズマンの際にどどまいやさんから 007ロゴの話について質問が出てたので、それに対する解答編が今回です。
 有名なガンロゴですが、あれはいつ誰がデザインしたのか御存知ですか? 誰もが思うだろう素朴なこの疑問ですが、答えを探すのはけっこう大変なんですよ…。(°∀° )
実はあのロゴが日本で使われだしたのは第7作の『ダイヤモンドは永遠に』からで、 それ以前は、部分的に使うことはあってもメインのロゴとしては普通の7を使ってました。 「あれ、『ドクターノオ』や『ロシアより愛をこめて』でガンロゴ使ってるの見たことあるぞ!」 とおっしゃる方がいるかもしれませんが、あれは1972年頃からの松竹系で改題リバイバル公開 した時で、その直前の1971年が『ダイヤモンドは永遠に』公開だから合わせたんですな。 かと言ってリバイバルはみなガンロゴかと言うとそうでもなくて、71年の『ゴールドフィンガー』、 75年の『二度死ぬ』は東宝系のせいか普通の7のままですが、 『ゴールドフィンガー』はポスターにはガンロゴを使ったものもあったからややこしい。('A`)
 このガンロゴ、73年『死ぬのは奴らだ』以降はニューボンドのロジャー・ムーアを印象づけようと ROGER MOOREのOと007の0を重ねるために長細くアレンジされたものに変わるんで、 日本では数年のみ使用かというと、日本語ではアルファベットのシャレが不可能なんで(笑)、 『死ぬのは』とその次の『黄金銃を持つ男』でも継続使用されました。 『私を愛したスパイ』でやっと長細いのに代わり、『美しき獲物たち』までのロジャー時代を完走し ダルトンに代わった『リビング・デイライツ』でも使われ続けましたが、『消されたライセンス』では 正式には邦題から007の文字は消え、JAMES BOND 007の英文が添えられるようになり, その際の007は昔のガンロゴが復活してます。こういう変則なことになったのは 当時の配給元が「シリーズ物は成績がジリ貧だからシリーズ物であることを隠せ」という バカな方針を持っていたせいで、こんなタワ事をほざく配給元は後に外されちゃって、 今ではこの作品もちゃんと『007/消されたライセンス』表記になったようです(苦笑)。
 このガンロゴ、最初に使われたのがいつかですが、『ドクターノオ』英国オリジナルポスターでは 7は普通の文字ですね。では2作目の時かというと、またややこしいことにそうではないんですよ…。 なかなか資料が見つからなかったんですが、やっと探し当てた事実は、
ガンロゴは本国より半年遅れで公開されたこの1作目のアメリカ版ポスターで初登場で、

電話帳的厚さと重さを誇る50周年記念本『ジェームズ・ボンド アーカイブ』でやっと、 デザインしたジョー・カルロフのインタビューを発見しました。
 ジョーことJoseph Caroffは『ウエストサイド物語』の印象的なポスターのデザイナーでもあり、 なんでもアメリカ公開前にワルサーPPKについてアンケートを取ったら、認知度が低かったので 映画の売りであるPPKを印象づけるために、あのガンロゴをデザインさせられたそうです。 ということはあれはPPKにサイレンサーを付けたイメージなんですかねぇ…。
 でも同時期に使われた別パターンのポスターでは、ロゴにソックリなある銃の輪郭が大きく使われ、 インタビューではそっちを先に発想したと答えてるので、この図案がガンロゴにつながったのは 間違い無さそうですが、その銃のシルエットはPPKじゃなくワルサーP38っぽく見えます…。('A`)
 この写真左がPPKで右がP38ですが、PPKは銃身だけが細長く突出してない銃だし、 サイレンサーを付けたとしても、銃身の先端に照準用突出(照星)はありません。 それから、銃の上の一番後ろの撃鉄の突出部がPPKは丸いけど、P38は尖ってますが、 シルエットの銃は照星はあるし、撃鉄は尖ってます ということは、ジョー自身がPPKの形状ををよく把握しないまま、間違ってP38のシルエットを使って ガンロゴをデザインした疑いが濃厚でしょうね。
そのロゴがその後007のイコンになったんだからカルロフの功績とそして罪も大きいですが、 実はこのガンロゴについては俗説があって、『ロシアより愛をこめて』以降、 宣伝写真やポスターでボンドがよく持ってるある銃を図案化したもの、と思われてました。 でも私は、007映画のサントラを1975年ごろの再発で全部そろえた際に、 『ドクターノオ』のジャケ裏にすでにガンロゴが使ってあるのに気づいてたんで、 その通説には疑問を持ってたんですが、今回判明してやっとスッキリしましたよ(笑)。
 この長年の謎を突き止められただけで約2万をはたいて『ジェームズ・ボンド アーカイブ』を 買った甲斐があったというものですわ。この本50×30×5cmもあって 手に取るだけでもナンギなんすよ…(ノД`)
ではその宣伝素材でボンドが持っている銃が何かは御存知ですか? 当然PPKだろ? と思うでしょうが困ったことにかなりの確率で違うんですよ、これが(苦笑)
 まず第1作の『ドクターノオ』ですが、先ほどの英国版でもアメリカ版でも写真素材は同じです。 その銃の部分を切り抜くとこうなりますが、明らかにPPKじゃないし、
 交換前のベレッタとも違います。 かなり妙な形をしたこの銃は正体がよく解らなくて、日本語の映画のガンサイトにも 007サイトでも記述は皆無、やっと海外のガンマニアが集う英語のデータベースで 論議されてるのを見つけましたが、いくつ候補は出たものの特定されてません。 この奇妙な銃はかなり薄っぺらい上に、銃本体とサイレンサー(に見える部分)の境目が はっきりしないので、その辺りが一体になってる陸上スタート用の信号銃だという説すら ありますが、この銃の正体どなたかお解りですか?
どうもスチル撮影の時に、たまたまその辺にあった銃を手に持って写真を撮っちゃったようで、 この時点では、スタッフすらボンド=ワルサーPPKとのイメージを持ってなかったことが解る ほのぼのエピソードですが、そしたらそのスチルを英国版ポスターを作ったミッチェル・ホックス(絵) &デビッド・チェイスマン(デザイン)がコラージュ素材にして使いポスターで大きく使われたので この謎の銃が目立ってしまいました。映画で007の銃=PPKと印象づけてる訳だから、 この銃がPPKという誤解が生まれた可能性すらあり、ガンロゴをデザインしたジョー・カルロフが ワルサーP38のシルエットを使ったのも同じような銃身が細長い銃を探しての結果かも知れません。
やがて『ロシアより愛を込めて』の製作が始まったんですが、その宣伝用スチル撮影の時に 小道具係がPPKを忘れたため(またしてもありえないミス)、カメラマンがたまたま車に積んでいた 空気銃ワルサーLP53を使うことを思いつきました。『ドクターノオ』のポスターの銃にも似てるし、 スチルだけなら問題は少ないだろうという判断だったんでしょうね。
 そしたらまた、この一連の写真がメイン宣材として使用され、『ロシア』のイラストポスター (レナート・フラティーニ&エリック・プルフォード合作)にもキッチリ使われて目立ちまくりました。
 日本でもパンフの表紙だったし、創元推理文庫から出ていた原作本の表紙にも長く使われたんで このスチルの浸透度は日本の方が深いかもしれません。
 かくしてワルサーPPKへの誤解はますます深まり3作目の『ゴールドフィンガー』になりますが、 この時オリジナルポスターで、例の「謎銃を持ったドクターノオの素材」を使うという考えられない 事態が起こります。さすがに銃はトリミングで外してあるけど、銃尻は写ってるのでもろバレです。 ここまで来ると英宣伝スタッフもワルサーPPKの形状を把握してなかったんだなぁと呆れますが、
 本国でもこのザマだから増して日本版ポスターでは『ロシア』のワルサーLP53絡みの写真を メインに使い、LP53が大写しされるという致命的ミスを犯してしまいます…。
 次の『サンダーボール作戦』ではロバート・マクギニスを起用し、彼のイラストでポスターを作りますが、 細身のシルエットが気に入ったのか、LP53をコネリーに持たせたイラストを描いてしまいます。 他に水中銃を持ったイラストも描いてるから細身の銃で統一したかったのかもしれませんが、 これがNGになってないんだから、やっぱ英宣伝スタッフがPPKの形を解ってなかったんでしょうね。
 日本でも新聞広告用に、その後の松竹系リバイバルで長く使われるのと同じ構図の ボンドの顔と銃を持った腕を合成したカットを作りましたが、この時の銃はLP53になってます。
 こっちがリバイバル時のメインポスターですが、ほら銃だけPPKと差し替えてあるでしょ?(°∀° )
 『007は二度死ぬ』でもまたマックはLP53を描き、007の銃というイメージが完全に定着しますが、 もちろんボンドがこの銃を使ったのは『ロシア』の宣伝用写真撮りの時1回だけで、 映画では画面に出たことすらありまへん。('A`)
次の『女王陛下の007』はさすがに指導が入ったのか、メインイラストではレーゼンビーはPPKを 持ってますが、サブやLP用イラストを担当したテレンス・ギルバートは、
 たぶん前作イラストポスターを参考用に見たんでしょうがLP53を持たせてしまいます(笑)。
 『ダイヤモンドは永遠に』ではマックは初期イラストではLP53を持たせてますが、 強力な指導が入ったのか完成版ではPPKに変わってます。
 しかし凝りないマックは『死ぬのは奴らだ』ではLP53とPPKの折衷的銃をムーアに持たせてるから、 よほど細身のシルエットが好きだったんでしょうね。 この銃、銃身の根元はPPKのようにノッペリしてますが、細長い先端に照星があるんですよ(笑)。
 『黄金銃を持つ男』でもマックは同じ銃を描いてるというガンコぶりで、 もうここまでくるとスタッフも説得を諦めたんでしょうね。┐(´∀`)┌ヤレヤレ
『私を愛したスパイ』ではイラストレーターがボブ・ピークに変わったので素直にPPKになってます。
その次の『ムーンレイカー』では初期ポスターはマックで、たぶん素材流用なんでLP53風銃ですが、 新規で同ポーズで「宇宙服姿のムーアがウージー改造スペースガンを構えるイラスト」を 描いてますが、これはなぜか使われず、ダニエル・ゴージーの同コンセプトで地球が背景という
 スケールアップしたイラストが使われます。マックの宇宙服バージョンは正直出来栄えが 良くないので、イラストレーターの交代もやむ無しでしょう。
『ユアアイズオンリー』ではオリジナルポスターは女性の太股の間でムーアが銃を構えるポスターで これをイラスト化したポスターも使われましたが、どちらもPPKでLP53もやっとお役御免と思いきや、
 日本版宣材にしか使われてない日本で描いたっぽいイラストに登場してましたが、 多分昔のを見て描いたんでしょうねw
『オクトパシー』も『美しき獲物たち』も新規イラストはゴージー作で銃はPPKになってました。 彼はLP53に何の思い入れも無いんでしょうが、考えてみたら1度だけミスで使った銃が、 20年近く生き残ってしまうとはすごい話で誰が予想したでしょうか? この時のミスった小道具係が誰だったのか知りたい気もします。(爆) 『リビング・デイライツ』のイラストポスターもちゃんとPPKでその後はイラストは 宣伝で大々的に使われなくなったので、今後はLP53の出番は無さそうです。
さて、今回はムービーガンの記事なので、トイガンに触れないといけませんが、 『ドクターノオ』の謎銃はもちろんトイガンなんてありません、と思いきや、 ホビージャパンムック『ヴィンテージモデルガンコレクションfile2』という本の中に こういう興味深いモデルガンを見つけました。
 これはMGCが最初期1963年に作ったTP19-63M(VPターゲット)でなんと同社2番目の商品です。 まだまだ商品ラインナップを拡充しないといけない時期に、最初のモデルガンの金型を流用してまで (つまりその製品は以降再販不能)、この銃を制作してるのですが、その最初のモデルガンとは ワルサーVP-IIというワルサー・モデル2を元にしたもの、そうワルサーの銃だったんですよ! 1963年とはちょうど1作目が『007は殺しの番号』として日本で公開された時期だし、 後の『007は二度死ぬ』ではステージガンに採用された程007に入れ込んだMGCのことです、 ボンドの銃がワルサーだってんで、版権という概念が薄い当時のことだし、すでにあった金型を元に ヒット商品を出してやれとばかり、海外ポスターを資料に、ボンドが持っている銃とガンロゴの形から、 こういう架空の銃を考え出したとしても何もおかしくありません(笑)。 公式にはこの商品はTP、すなわちターゲットピストルで、東京オリンピックの人気に当て込んで 企画されたことになってますが、そのへんは大人のジジョーかも知れないし…。 そういうたくましい商魂が当時のMGCにあったかどうかはさておき(笑)、 残念ながらこのモデルガンは「火薬を使ってプラスチック製弾丸を撃つ」機能を持っていたため。 警察に目をつけられて発売数は少なかったようで、007マニアにとっても珍品なのに残念です。
さて、続いてワルサーLP53ですが、こちらは火薬を使わぬ空気銃なんでアメリカではオモチャ扱いで トイガンが無いようです。NETで探すとイギリスのショップがホンモノから型取りした レジン製のレプリカを売ってましたが、日本から買えるかどうかはビミョーなので、他に探してみると
 このタカトクのファルコン077という、BB弾になる以前のツヅミ弾使用のトイガンをみつけました。 こちらは通説ではLP53のデザインを参考にしたそうで、「077」という型番からも本当でしょうね。 3本も映画が作られた077シリーズ等、当時結構使われたパチボンドの番号でしたからね(笑)。 こちらも大人のジジョーでLP53とは唱ってませんが、よくぞ作って一般市販してくれたもんです。
 ホンモノよりゴツイし、ライフルみたいなボルトロック式なんでボンドポーズを取ると、 レバーが目立っちゃうけど、その気分にはなれるかな? 商品的には黒と銅色仕上げがあって、手に入ったのはカパーだったけど、この塗装はこれで 味があるので、ガンメタに塗り替えるのはしばらくやめておきます(笑)。
以上が、現時点で私が把握してる007のガンロゴに関する話です。 ね、そうとう長くなったでしょ、どどさん?(°∀° )
テーマ:ホビー・おもちゃ - ジャンル:趣味・実用
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