 横山光輝先生の描かれたロボットの中で、一番人気はもちろん鉄人28号ですが、2番目はやはり ジャイアントロボでしょう。美形巨大ロボットの元祖とも言われるジャイアントロボは、
 週刊少年サンデーに1967年(昭和42年)5月の20号から 1968年(昭和43年)3月の19号まで連載されました。
 1967年の5月って、『鉄人28号』の連載を特に最終エピソードも設けず、 お詫びカットを描いてその中で「すっかりくたびれちゃったんだと思います」と 鉄人の気持ちを類推するふりをしてたぶん自身の心境を語って終わらせてから、 わずか1年程度しか経っていません。 10年以上描かされてすっかり飽きがきたロボット物というジャンルを、 はたしてそんな短期間でまた描きたくなるものだろうかと疑問に思ってたら、
東映の渡邊亮徳プロデューサーの伝記『日本ヒーローは世界を制す』 (角川書店刊)の中に 「『大魔神とウルトラマンをドッキング』というコンセプトを元に、東映は『鉄人28号』の横山光輝に テレビ化前提のロボット物の原作を依頼」という内容が書いてありました。 なるほど、『仮面の忍者赤影』と同じパターンだった訳ですね。 でも『赤影』は東映テレビ部のために『伊賀の影丸』を終わらせ『赤影』の原作を描き、 基本フォーマットを作ってあげたんだから、それよりムチャ度は少ないようですが、 1967年の5月は『赤影』の連載が続いてた時期な訳ですよ…。('A`)
さすが豪腕で知られる渡邊Pです。ただでさえ気が進まぬ『赤影』に加え、さらに気が進まぬ ロボット物を発注してくるとは、温厚な横山先生も重ねての傲慢な振舞には頭にきたでしょうが、 大人なので「キャパオーバーだから」という理由で断ろうとしたんじゃないでしょうか? それでも東映のゴリ押しでサンデー編集部に押し切られ「ネームまでなら」とシブシブ承諾したので、 サンデー編集部が、当時『青の6号』を連載中だけどキャパ的には余裕があると判断された 小沢さとるを作画担当に抜擢したんじゃないでしょうか? ※「ネーム」とは何かという説明はこちらを御覧下さい。
小沢先生は横山先生のアシスタント出身じゃないので、通常ならこの合作はありえないんですが、 やはり大きな軋轢を生んでしまいました。 もともと横山先生と小沢先生では絵も全然違いますし、師弟関係ですらないので、 たぶん小沢先生はやがて横山先生のネームを大幅に改変しだしたんじゃないでしょうか? 日本の漫画家にとって一番大事なのは、実はネームだったりします。漫画家の創意工夫が問われ 一番個性が出るのがネームで、作画はアシスタントを使って仕上げる単純な繰り返しの作業なので 漫画家によっては「ネーム作るのは好きだけど、作画は嫌い」と明言する人までいる程です。(苦笑)
このように無理な体制で始まった『ジャイアントロボ』の連載は、たった2ヶ月で両者は決裂します。 小沢先生が『ジャイアントロボ』降板時に「今後一切『ジャイアントロボ』に関する権利を放棄する」 との念書を光プロに渡したらしいという話があるので、かなり遺恨は残ったようです。
それでやむなく横山先生は1部の途中から2部までは自身で執筆し、キャパを越え嫌気が差し、 「さらに忙しくなったからアシにまかせた」として、3部はまたネーム&監修に専念したのかも…。 実際、3部連載中の1967年1~3月は『赤影』の連載が終わり(こっちも途中で止めた感有りあり)、 その後に入れた仕事も読切、もしくは短期連載ばかりで仕事量はむしろ減ってるはずですが、 『赤影』も『ジャイアントロボ』も中断同然の終わり方で、以降、東映テレビとの仕事はしてないから、 横山先生にとってはよほどイヤな印象しか残らなかったんでしょうね。 東映テレビは1970年以降は石森章太郎先生を「原作者」に選びますが、もし横山先生との関係が 続いていれば、横山デザインの仮面ライダーやゴレンジャーが見れたかもしれません…。(°∀° )
こんな理由で『ジャイアントロボ』漫画版は単行本が長いこと出ませんでした。生前のインタビューで 「あの頃、サンデーに「GR」と「赤影」の2本、週に30ページ以上描いていた。それで鉄人のように じっくりやれずいろんな人と描いた。僕と小沢さとるさんともう2人で。それで絵が変わってしまった。 似てるんだけどちょっと違う。それがイヤになって連載もやめた。単行本にしたらその違いは一目で 分かる。 もし出すなら全部描き直しです。それで単行本の許可を出さんのです。出してはマズイ。」 と横山先生は発言されてるし、1998年8月に出たソフトガレージ刊『横山光輝まんが集』という 豪華本は一度「ジャイアントロボ完全収録」と謳いながら、発売が延びた挙句、結局第2部だけの 掲載となってガッカリして買うのを止めた記憶があります。
実は平成の初め頃、吉祥寺の古本屋で少年サンデーのGロボ掲載分が大量に、 それも1冊300円というバカ安値で売ってるのを見つけて買占め、欠けてた数冊を、 友人を頼ったり、相場価格を出して買ったりして、全連載分のコピーは揃ってたんですが、 正規の単行本で読めるなら4500円も高くないと思ったけど、第2部だけじゃねぇ…。
 このように表紙にしてる程だから、『横山光輝まんが集』って、Gロボ復刻で4500円もする 高い本を買わせる魂胆だったろうに、横山先生邸での交渉は難航し、なんとか了解をもらったのが 第2部だけの復刻だったそうで、ソフトガレージ編集者は「GR第1部第3部の復刻は 先生の拒絶反応が頑として強く絶対に無理」と発言してます。この本が今でも17年も経った今でも 新刊で買えるのはGロボ復刻が中途半端だからでしょうねぇ…。(ノД`)
このように当分無理と思われた『Gロボ』復刻でしたが、横山先生が2004年4月15日に 69歳の若さで寝煙草の不始末が原因の火事で亡くなってしまうという不幸な事故が起こり、 早くも2005年に出版されてしまいました…。もちろんすぐに買いましたが、 遺族のこの速攻にモヤモヤしたものを感じたのも確かです…。('A`)
 漫画版の話に終始しましたが(笑)、ここらでオモチャのお話に移ります。 オモチャは漫画版って訳じゃなくTV版ですが、セガのプライズとして出たソフビで約30cmの大きさ。 エクスプラスが原型を担当したようで、ディテールも塗装も素晴らしい出来映えです。 特徴的なのは瞳をただの塗装で済ませるんじゃなくドールアイ的なギミックを仕込んでいる点で、 撮影用スーツもクリア素材の内側に黒目を仕込んであるので、イメージはピッタリです。 なぜか相場もあまり高くなく数千円の御手頃価格で手に入ることが多いので、 何か一つジャイアントロボのオモチャが欲しい人には狙い目です。(・∀・)
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